ベンダーコントロール(ベンダー管理)とは?外注プロジェクトの進め方を徹底解説!│IT初心者のための基本ガイド

はじめに

現代のITビジネスにおいては、システム開発を外部ベンダーに委託することが一般的となり、特に効率的なプロジェクト運営を目指す非IT企業にとっては、ベンダーの活用はもはや欠かせない手段となっている。しかし、外部ベンダーにシステム開発を委託することにはさまざまなメリットがある一方で、プロジェクトの成功要因であるQCD(品質/コスト/納期)をどうコントロールするかといった課題が付きまとう。こうした背景から、外部ベンダーに委託したシステム開発が期待通りに遂行されるよう、ベンダーを適切に管理・監督する「ベンダーコントロール(ベンダー管理)」が重要になる。

本記事では、ベンダーコントロールの定義やその重要性、具体的なプロセスなどを、IT初心者の方にもわかりやすく解説する。さらに、ベンダーコントロールにおける課題とその対策まで、ベンダー管理に必要な知識を網羅的に提供する。本ガイドが、プロジェクトの成功を支えるための一助となれば幸いである。

ベンダーコントロールの定義

まず初めに、ベンダーコントロールの定義について理解しておこう。

ベンダーコントロール(ベンダー管理)とは、企業がシステムのパッケージ導入やスクラッチ開発を外部業者に委託する際、プロジェクトを含むその業務全体の品質、コスト、納期、リスクなどを適切に管理・監督するためのプロセスで、ベンダーの作業品質や進捗状況等を適切に管理することである。具体的には、ベンダーの選定から契約内容の明確化、品質のチェック、進捗状況の把握、リスクのモニタリングなどの活動が含まれる。

▲図1:ベンダーコントロールの対象

ベンダーコントロールの重要性

次に、ベンダーコントロールがなぜ重要であるかについて、6つの観点から解説する。順にみていこう。

  1. プロジェクトの品質を確保するため
    ベンダーが作成する成果物やそのプロセスを管理しなければ、プロジェクトの品質がどのような状況になっているかが把握できない。そのため、定期的な品質チェックや品質評価を行い、期待水準に達していない作業や成果物があれば早期に改善を求める必要がある。

  2. コストを管理するため
    契約時に適切な範囲と価格を明確にしておくこと、進行中の予算オーバーを早期に発見し対応することが、プロジェクトのコスト管理には不可欠となる。もしベンダーコントロールが不十分だった場合、予想外の費用が発生し、最終的なコストが大幅に増加するリスクがある。

  3. スケジュールを管理するため
    ベンダーコントロールを行うことで、各フェーズの進捗状況を正確に把握することが可能になる。もし遅延が発生した際には早急に調整を行い、スケジュールの見直しやリソースの再配置など柔軟な対応を要求する。特に大規模なシステム開発では複数のベンダーが関与するため、一つのベンダーの進捗が遅れると全体のスケジュールに影響が出るので厳重な管理が求められる。

  4. リスク管理とトラブル防止のため
    ベンダーコントロールは、リスク管理の観点からも重要である。例えば、契約不履行や品質低下、納期遅延といったリスクは、プロジェクトの成功を脅かす要因となる。そのため、定期的なリスク評価を行い、潜在的なリスクを早期に発見し、問題が発生する前に手を打つことが重要となる。

  5. コミュニケーションを円滑にするため
    プロジェクトの成功に向け、ベンダーとの信頼関係の構築は欠かせない要素である。なぜなら、コミュニケーションが円滑だからこそ、双方が協力して課題解決に取り組むことが可能になるからである。また、信頼関係が構築されると、ベンダーもプロジェクトに対して責任感を持ちやすくなるといったメリットもある。

  6. 法的トラブルを回避するため
    システム開発には法的な契約が伴うことが多いため、ベンダーとの契約内容や作業範囲を明確にしておくことが重要である。特に、知的財産や個人情報の取り扱いに関するトラブルは企業の信頼性にも影響を与えるため、管理の徹底が求められる。

ベンダーコントロールにおける役割

ベンダーコントロールには、発注側からは主に以下のメンバーが関わり、それぞれの役割を担う。但し、プロジェクトマネージャーには全ての把握が求められる。

  1. プロジェクトマネージャー
    プロジェクト全体を管理し、契約管理やベンダーとのコミュニケーション管理を行う。進捗状況やリスクを把握し、必要に応じて契約内容あるいはプロセスの見直しのため、ベンダーと協議・調整を行う。

  2. 契約担当者
    契約内容を精査し、適切な条件でベンダーと契約を結ぶ。万が一契約に基づいた問題が発生した場合には、迅速に対応策を講じる。

  3. 品質管理担当者
    ベンダーから提出される品質報告が、プロジェクト計画書で合意した品質基準を満たしているかを確認し、改善を促す役割を担う。

ベンダーコントロールの主なプロセス

ベンダーコントロールを行う際、プロジェクトの成功に向けて段階ごとにプロセスを確実に実行することが重要となる。ここでは要求定義まで遡って、要求定義の作成からRFI実施、RFPの送付、ベンダー選定、契約とプロジェクト計画の合意、パフォーマンスのモニタリング、評価までの一連の流れをSTEPごとに解説する。

  • STEP1:要求定義の作成
    まず初めに、プロジェクトの成功に必要な条件やゴールを明確にするために、要求定義を作成する。この段階では、プロジェクトが目指すべき目標、業務や機能、非機能の要求、求められる品質基準、納期、コストなどを洗い出し、整理する。要求定義をしっかりと固めることで、後のステップでベンダーに具体的かつ明確な要件を伝えやすくなり、適切な提案やサービスを受けることができる。

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  • STEP2:RFI(情報提供依頼書)の実施
    要求定義を基に、RFI(Request for Information)にて情報収集を行う。RFIは、ベンダーの能力や実績、技術的な強み、対応可能なサービス内容などを理解するために行うものであり、企業がプロジェクトのニーズに合うベンダーを見つけるには、候補となるベンダーからの情報提供が不可欠である。RFIを通じて収集した情報をもとに、企業のニーズに合致しそうなベンダー候補を絞り込む。
  • STEP3:RFP(提案依頼書)の送付
    RFIによって絞り込んだ候補ベンダーに対して、具体的な提案を求めるためにRFP(Request for Proposal)を送付する。RFPには、具体的なプロジェクトの内容、期待する品質、予算、スケジュール、リスク管理、条件や取り決めごとなどが明記される。詳細なRFPを作成することで、ベンダーがプロジェクトの要求に沿った提案を出しやすくなる。この段階で、ベンダーが提供可能なサービス内容や費用感、スケジュール感を確認し、最終的な契約候補として適したベンダーを選別する。
  • STEP4:ベンダー選定
    RFPに基づき提出された各ベンダーの提案内容を評価し、最適なベンダーを選定する。この評価では、費用対効果やスケジュールの遵守、提供される技術的ソリューション、実績など、複数の観点から慎重に比較検討を行う。選定にあたっては、わかりやすいコスト面だけでなく、長期的な関係構築や信頼性を考慮することも重要である。また、ベンダーができることだけではなく、できないことの見極めも重要視したい。

▲図2:ベンダー選定までの具体的な流れ(例)

  • STEP5:契約の締結とプロジェクト計画の合意
    ベンダーが決定した後、正式に契約を締結する。その後にベンダーが作成するプロジェクト計画で、納期、品質基準、コスト管理、リスク対応などの具体的な条件の取り決めを行う。また、プロジェクト中に予想外の事態が発生した場合の対応方法や、変更管理のルールも確実に契約内容に盛り込むようにする。但し、ベンダー側にも進め方や基準があり、調整が必要となる場合もあるので、そのあたりは臨機応変に対応したい。ベンダーコントロールにおいては、この契約に記した内容、およびプロジェクト計画書での合意内容が最も重要で、本質的には、ここで合意した内容がベンダーコントロールの全てを左右すると言っても過言ではない。
  • STEP6:進捗のモニタリング
    プロジェクトが開始された後は、ベンダーが合意した基準を満たしているか、モニタリングを通じて進捗確認を行う。定期的な報告会やレビューを実施し、進捗状況や品質チェックを行うことで、プロジェクトが計画通りに進んでいることを把握するように努める。
  • STEP7:ベンダー評価の実施
    プロジェクトが完了したら、ベンダーのパフォーマンスを評価する。評価項目には、納期の遵守状況、品質の達成度、対応の柔軟性などがある。評価結果はベンダーの強みや改善点が明確になるなど、今後のベンダー選定にも活用できる貴重なデータとなるので、必ず実施するようにしたい。

ベンダーコントロールにおけるプロジェクト計画書の重要性

ベンダーが作成するプロジェクト計画書は、プロジェクトの全体像を明確に示す重要なドキュメントである。このプロジェクト計画書は、プロジェクトの目標、スコープ、リソース、品質管理、コスト管理、スケジュール管理、リスク管理などを明確に示す文書であり、契約書とともにベンダーとの協力関係を円滑にするための基盤となるものである。ここでは、ベンダーコントロールにおいてプロジェクト計画書がなぜ重要なのかを、具体的に解説する。

  1. プロジェクト計画書が提供する透明性
    プロジェクト計画書により、開発プロセスがどのように進行し、何が求められるかが発注側に対して明確に示される。特に、スケジュールやリソース配分についての詳細が含まれることで、発注側が開発の各段階でどのような進捗を期待できるかが具体的に理解できるようになる。この透明性は、信頼関係の構築にも寄与し、プロジェクト成功の土台を築くための重要な要素となる。

  2. リスク管理の基礎
    プロジェクト計画書には、潜在的なリスクや問題の予測、リスク管理のための対応策が含まれる。これにより、発注側はプロジェクトの進行中に発生しうるリスクを理解し、ベンダーと協力して予防策を講じることが可能となる。リスク管理の計画は、プロジェクトが円滑に進行するために不可欠であり、計画書に基づいた適切なリスク対応は、予期せぬ遅延や追加コストの防止に繋がる。

  3. ベンダーの責任範囲の明確化
    プロジェクト計画書には、ベンダーが担うべき具体的な業務範囲と責任が明記される。これにより、役割やタスクが曖昧になるリスクを回避し、発注側とベンダー間での責任の所在が明確化される。この計画書が存在することで、後の段階での意見の相違や誤解を最小限に抑えることができる。

ベンダーコントロールの課題

ベンダーコントロールで、特に押さえておきたい課題について、以下の3点を対応策とセットで解説する。では順にみていこう。

  • コミュニケーションの難しさ
    発注者とベンダーは、それぞれ異なる業界、異なる企業文化を持つ組織体であるため、相互間の意思疎通には当然のように問題が発生する。例えば、仕様に対する解釈の違いが原因となり、プロジェクトの進行や成果物の品質に影響を及ぼすことがある。

    対応策としては、以下の2点を挙げておく。
対応策内容
相互に用語集を作成して共有する発注側の業界用語やベンダー側のIT用語は、相互に専門性が高いために理解できなかったり誤認識を生んだりするため、各々が事前に用語集を作成して共有するようにする。また、プロジェクト発足後も理解の得難い用語については、随時用語集に追加し、その都度共有するようにする。
報告フォーマットの設定や定期ミーティングを実施する発注側から報告フォーマットを設定し、進捗状況や問題点を統一された形式で報告するよう促す。また、週次や月次で定期ミーティングを実施し、進捗確認や問題点の共有を頻繁に行うようにする。
  • 契約による制約
    契約上の制約から、仕様変更がスコープ外とみなされ対応できない場合があり、その変更を進めようとすると発注側が想定していなかったコストや手間が発生するリスクがある。

    この対応策として、以下を挙げておく。
対応策内容
仕様変更に対する具体的な対応条項を契約内容に含める
 
各ベンダーとの契約を交渉する際には、プロジェクトの進行に伴う仕様変更に対して具体的な対応条項を含めるようにする。これにより、仕様変更に対してもある程度柔軟な対応が可能になり、想定外のコストや手間の発生リスクを低減する。
  • 品質管理
    ベンダーによっては、提供される成果物の品質にばらつきが生じることがある。このように品質に一貫性がない場合、各成果物の整合性が欠如し、最終的なシステム全体の品質低下につながるといったリスクがある。

    対応策として、以下を挙げておく。
対応策内容
統一された品質管理基準を設定する明確な品質管理基準を設定し、ベンダーにその基準を共有・遵守してもらう。具体的には、ドキュメントのチェックリストやレビューの基準、テスト基準などを設定し、モニタリングや検収時にチェックを行うことで品質のばらつきを防ぐ。

複数ベンダーをコントロールする場合の注意点

大規模なシステム開発になると、プロジェクトを構成するベンダーが複数になる場合がある。このような複数ベンダーの管理には、それ相応の難しさがある。以下に注意点を示したので、順にみていこう。

  1. 役割分担と責任範囲の明確化
    複数のベンダーが関わる場合、それぞれの役割分担と責任範囲を厳密に明確化することが必須となる。少しでもあやふやな部分があると、トラブル時の責任所在を曖昧にし、解決までの時間を長引かせる要因となる。また、どのベンダーがどの成果物を担当し、どのタイミングでどの作業を行うべきかを、プロジェクト全体のスケジュールに落とし込み、発注側で一元管理する体制を構築することもキーポイントとなる。

  2. 共通のコミュニケーション手段の確立
    異なる企業文化を持つベンダー同士が円滑に連携できるよう、共通のコミュニケーション手段やフォーマットを整備することが重要となる。また、定期的な会議や進捗報告の仕組みを設け、発注側が議事録の作成を行うことでプロジェクトの進捗を可視化し、各ベンダーが常に最新の情報を共有できるようにすることが望ましく、この点も重要なポイントとなる。

  3. 統一した品質管理基準の設定
    各ベンダーによって品質管理の方法が異なる場合、発注側で統一した品質基準を設け、ベンダー全体で共有できるようにするのが賢明な判断となる。このように品質管理の基準を統一することで、開発途中や納品時における品質のばらつきを最小限に抑えることが可能になる。

編集後記(まとめ)

ベンダーコントロールは、企業がプロジェクトを成功に導くために必要不可欠な管理プロセスである。ベンダーコントロールを適切に実施することで、発注側はベンダーに委託したシステム開発プロジェクトのQCD(品質/コスト/納期)の面でより確かな成果を得られるようになる。
また、プロジェクト中にベンダーとの信頼関係を構築することで、将来的なプロジェクトでも迅速かつ柔軟な対応が可能となり、競争力の強化につなげることができる。ITシステムの必要性が増すなか、効果的なベンダーコントロールがますます重要になることが予測できる。

ベンダーコントールに関するより詳細な情報や、貴社の状況に合った具体的な提案が必要な場合は、お気軽にご相談ください。ベンダーコントロールについては、例えば、以下のような問い合わせを多く頂戴しております。

  • 外注先のITベンダーの選定に失敗したくないが、選定基準がわからない
  • 開発案件が入るたびに、ベンダーの選定に多くの時間がかかっている
  • ベンダーとのコミュニケーションがうまくいっていない
  • 専門知識がないため、ベンダーと対等なコミュニケーションが取れない
  • ベンダーをマネジメントできるスキルを持った社員が社内にいない
  • ベンダーからの成果物の妥当性がわからない

QualityCubeでは、最上流の企画/要求定義工程から下流のテスト工程まで、プロダクト分析とプロセス分析による現状分析や品質コンサルティング、更にはDXコンサルティングも行っております。開発製品やサービスの品質向上や品質改善、その他DXに関することでご課題やご検討中のことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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