プロジェクト規模が小さくなればなるほど削減されるコストはマネジメント工数ですが、小規模プロジェクトにPMOは本当に必要ないのでしょうか?本記事では、小規模プロジェクトだからこその難しさに焦点を当てて、小規模プロジェクトのマネジメントとPMOの必要性について考察していきます。
ちなみにイメージ合わせとして、小規模プロジェクトの定義をIPAデータから引用したもので話を進めていきます。
小規模 | 30名未満のプロジェクト |
中規模 | 30名以上~100名未満のプロジェクト |
大規模 | 100名以上のプロジェクト |
出典:アジャイル型開発におけるプラクティス活用事例調査 調査報告書
P.17 表3-4 規模別分類 -IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
小規模プロジェクトの方がPMは多忙!?
小規模プロジェクト(30名未満のプロジェクト)の場合、「PMだけで全体の状況把握をしないといけない」とか、「PMOの役割はPL(プロジェクトリーダー)が兼任すればよい」などと言われ、ほとんどの場合、マネジメント予算はカットされることでしょう。
しかし、プロジェクトに対する事前の見通しとは得てして実態がかけ離れたものとなり、結果的に失敗に至るケースが多いのも事実です。
では、なぜ小規模プロジェクトが失敗してしまうのでしょうか?
それは、小規模であるがゆえ、PMがプレイングマネージャーとなってしまい、レビューなどの実作業に多くの時間を取られてしまうからです。
結果的にマネジメントする時間はほとんど取れなくなり、WBSや課題管理表などの更新頻度が落ち、やがてプロジェクトが制御不能となるパターンを歩んでしまいます。
小規模プロジェクトにおけるPMOの役割
では、このような状況に対してどう対処するのが正解なのでしょうか?メンバーを増やしてPMの作業率を減らすことは一案です。
しかしながら、これはPMが有能な場合に限り、PMのスキルや能力に少しでも不安がある場合は、メンバーを増やすのではなく、PMOを導入した方がプロジェクトの成功確率が上がります。
プレイングマネージャーとして実作業に追われているPMの代わりになれるのは、やはりPMOで、PMに成り代わってプロジェクト全体把握、スケジュール管理、課題やリスクの把握・管理・対応を推進していく存在が必要で、それを可能にするのがPMOの活用です。
プロジェクトの成功を一番に考えた場合、たとえ小規模プロジェクトであっても状況に応じてPMOを検討することをおススメします。
PMとPMOの役割分担
小規模プロジェクトでもなんとか効率的にPMOを活用するために、ここではPMとPMOの役割を考えたいと思います。なぜならPMOにコストを充てる分、プロジェクトの成功確率を上げる必要があるからです。
PMとPMOによる効率的な役割分担としては、以下のようにするのがベストです。
- マネジメント全般はPMOに任せる
- PMはPMOに一任したマネジメントの要点のみを押さえて意思決定を行う
このことから、小規模プロジェクトにPMOを導入した場合、PMOはマネジメント実務に長けた人材が担うことが重要となります。
プロジェクト規模に合ったプロジェクト計画書を作成する
プロジェクト計画書を作成し、その計画に則ってプロジェクトを管理することは、PMにとってもPMOにとっても重要な業務です。
プロジェクト規模の大小に関わらずに同じような管理をしてもうまくいくわけがないのですが、プロジェクト規模をちゃんと区別してプロジェクト計画書に落とし込めるPMは案外少なかったりします。
前回記事『「PMO」とは?近年大きな注目を集めている「PMO」について要点を解説』の中で、『PMOの業務も多岐に渡りますが、
その中でもっとも重要な業務がプロジェクト計画書のチェックだと言えます』と書きましたが、プロジェクト規模に対する考慮がプロジェクト計画書に反映されているかをチェックすることもPMOの重要な役割となります。
まとめ
ここまで述べてきたように、プロジェクトの成功を重視した場合、小規模プロジェクトとPMOの役割や活用方法が新たに見えてきます。
複雑化した現代のプロジェクトにおいて、規模が大きくなることでPMの難易度は更に上がりますが、規模が小さいからと言ってもそう簡単な話ではなく小規模には小規模なりの難しさがあります。
規模の大小を問わず、どのプロジェクトにおいても目的は成功ただ一つです。
今後のプロジェクトの成功確率を上げるため、たとえ小規模プロジェクトであってもPMOの導入を検討材料として持って頂ければと思います。