この記事は中小企業の経営層の方に向けて執筆いたしましたが、それ以外の方にも参考にしていただける内容ですので、一人でも多くの方に目を通していただきたいと思っています。
第4章までありますが、ブックマークをして、お時間のあるときに1章ずつお付き合い頂ければ幸いです。では早速解説を始めます。
第1章:DX人材とは?なぜ今、DX人材が必要なのか?
DXとは何か?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、企業のビジネスモデル、プロセス、文化を根本から変革することで、新たな価値を創出し、競争優位性を確立することです。
わかりやすくまとめると、以下の5点をベースにした経営にシフトしていくことがDXといえます。
- データを活用する
- デジタル技術を活用する
- ビジネスモデル、プロセス、文化を変革する
- これができる能力、スキルを持ったDX人材を確保する
- DX人材で成り立った組織作りを行う
以上のことからわかるとおり、DXの本質は単にITツールを導入するだけではなく、以下に示すような企業を根幹から覆すような変革のことを指します。
- ビジネスモデルの革新:既存のビジネスモデルをデジタル技術で刷新し、新たな収益源を開拓する
- 顧客体験の向上:データとデジタル技術を駆使し、顧客体験をパーソナライズし、より満足度の高いサービスを提供する
- 組織文化の変革:組織の壁を越えて連携し、イノベーションを促進する文化を醸成する
- データに基づいた意思決定:データ分析を通じて、より科学的な意思決定を行う
言葉で説明すると以上のようになりますが、DXは概念も含んでおりイメージしにくいかもしれませんので、いくつか例をあげておきます。
小売業DX
オンラインストアと実店舗を連携させたオムニチャネル戦略
製造業DX
IoTを活用したスマートファクトリーの実現
金融業DX
FinTechの導入による新しい金融サービスの提供
しかしながら、現在の日本においては、DXに取り組んでいる企業の9割が迷走していると言われます。その要因はさまざまでしょうが、DXの本質を理解していないことに主な原因があるように思われます。だからこそ、DXに関する正しい知識を身につけ、DXの本質を理解することが必須であり、結果的にDX実現への近道となります。
なぜ今、DXが重要なのか?
これまでに、今ほどビジネス環境が日々変化するような時代があったでしょうか?ましてや少し先のことさえも不透明で、過去の成功体験がまったく通用しない時代に突入しています。このような状況で太刀打ちするにはどうすればよいか?その答えはやはりDXでしょう。
以下にDXに向けて押さえておくべき要点を箇条書きで記します。
- 市場環境の変化への対応:グローバル化、少子高齢化、顧客ニーズの多様化など、ビジネス環境が日々変化するなか、その状況に対応していく必要性がある
- 競合との差別化(独自化):DXを推進することで、競合他社との差別化(独自化)を図る必要性がある
- 生産性の向上:業務の効率化や自動化により、生産性を向上させる必要性がある。
- 新しいビジネスモデルの創出:デジタル技術を活用することで、新たなビジネスモデルを創出する必要性がある
DX人材とは?
DX人材とは、デジタル技術を活用し、企業の変革を推進できる人材のことです。DX人材にはITスキルだけではなく、ビジネス感覚、問題解決能力、リーダーシップなど、幅広い能力が求められます。
DX人材は、以下のスキルや能力を備えている必要があり、DX推進に向けてはその企業が必要とするDX人材の要素を決定し、各DX人材のスキルや能力の組み合わせで考えるようにします。
- ビジネススキル:ビジネスモデルの設計、戦略立案(マーケティング)、プロジェクトマネジメント
- システム構築スキル:仕様書・設計書の作成、UIデザイン、プログラミング、テスト、セキュリティ技術
- デジタルスキル:統計、データ分析、クラウド技術、
- リーダーシップ:チームをまとめ、目標達成に向けてチームを導く
- コミュニケーション能力:異なる部門の人たちと連携し、折衝や意見交換を行う
- 問題解決能力:複雑な問題を分析し、最適な解決策を導き出す
- 変化への適応力:ビジネス環境を分析し、その変化に柔軟に対応する
なぜDX人材が必要なのか?
DXは1回実施するだけで効果が出るものではなく、継続的に推進していかなければなりません。組織にDX人材がいなかった場合、外部組織の支援等によりDXに着手できたとしても継続性がないため、DXによる効果は生まれません。
DXは、「DX推進のキーパーソンとしての役割」「新しいビジネスモデルを創出する役割」「組織変革を牽引する役割」など、さまざまな役割を担えるDX人材が揃っているからこそ、DXの実現に向けて推進させていくことが可能となります。
DX人材とIT人材の違いとは?
DX人材とよく似た言葉にIT人材があります。しかしDX人材とIT人材は、求められるスキルや役割が異なりますので、ここで確認しておきましょう。
大きな違いは、「ビジネススキル」や「リーダーシップの有無」です。DX人材はIT人材を内包していると覚えておくとよいでしょう。
区分 | DX人材 | IT人材 |
---|---|---|
主な役割 | ビジネス変革の推進、新しいサービスの創出 | システム開発、運用、保守 |
必要なスキル | ビジネススキル、ITスキル、リーダーシップ、コミュニケーション能力 | プログラミング、ネットワーク、データベース |
中小企業におけるDX人材育成の課題と対策とは?
中小企業は大企業と比べて人材や資金の制約があるため、DX人材の育成が非常に難しい状況にあります。
以下に主な課題とその対策例を列挙してみたいと思います。
課題
- 人材の確保:専門知識を持つ人材の採用が難しい
- 費用:人材育成プログラムの費用負担が大きい
- 時間の確保:業務と人材育成を両立させることが難しい
対策
- 社内育成:社内の人材を育成することで、費用を抑えることができる
- 外部機関との連携:専門機関と連携し、自社の状況に合った効率的な育成プログラムの提供やサポートをお願いする
- eラーニングの活用:時間や場所に縛られない学習が可能であるため有効
- インターンシップ:DXやITを学んでいる学生に対してインターンシップを実施し、将来の採用につなげる
第1章のまとめ
第1章はここまでです。DX人材は、DXによる企業の成長を加速させるための重要な資産となります。また、必要とするDX人材を自社に囲うことで、その企業は競争力のある組織へと変貌することが可能となります。中小企業においても、様々な取り組みや工夫によりDX人材を確保することは可能です。
ご質問・ご要望
このブログは中小企業の経営者様向けに、DX人材育成について分かりやすく解説することを目指しています。より詳細な情報や、貴社の状況に合わせた具体的な提案が必要な場合は、お気軽にご相談ください。
例えば、以下のようなお問い合わせを多く頂戴しております。
- DX人材の育成方法を知りたい
- 自社の業種に合ったDX支援策を知りたい
- 具体的なDX導入事例を知りたい
- 推進しているDXの内容を精査して今後の方向性を示してほしい
第2章:DX人材の育成方法
DX人材を育成する目的とは?
第2章では、DX人材の育成方法を中心に解説していきます。はじめに、DX人材の育成目的から確認していきます。DX人材を育成する目的は、以下に集約されます。
- DXプロジェクトを成功させるため
- 組織のDX化を継続的に推進していくため
- 顧客と価値を創造し続けることにより、企業の競争力強化を成し遂げるため
DX人材の育成方法はどうする?
DX人材の育成方法は、大きく分けて3つに分類することができます。一つずつ確認していきましょう。
OJT(On-the-Job Training)
- 実際の業務を通じて、スキルを習得する
- メンター制度やジョブローテーションなどを活用する
OFF-JT(Off-the-Job Training)
- 研修やセミナーなどを通じて、知識やスキルを習得する
- 外部講師を招いての研修や、オンライン学習プラットフォームの利用なども有効
外部研修
- 専門的な知識やスキルを習得するために、外部の研修プログラムに参加する
- ビジネススクールや専門学校など、ほかにも様々な選択肢がある
DX人材育成のポイントとは?
DX人材育成にはどのようなポイントがあるのでしょうか?主なポイントを4つ挙げますが、4番目の「社内の風土作り」は中長期的な視点で取り組む必要があるため、早めに仕掛けていくことが重要です。
- 個々の能力とキャリアパスに合わせた育成計画:各個人の能力やキャリアパスに合わせて、最適な育成計画を策定する
- 実践的な学習機会の提供:実務を通して学び、成長できる機会を提供する
- 目標設定と評価:明確な目標を設定し、定期的に評価を行うことで、モチベーションを維持する
- 社内の風土作り:失敗を恐れずに挑戦できる風土、学び続ける文化を醸成する
DX人材育成における注意点は?
ここでは、DX人材育成における注意点を確認していきます。注意点としては3つあります。
- 育成期間の長期化:DX人材の育成には、ある程度の時間がかかる
短期的な成果を求めすぎず、長期的な視点で育成に取り組む必要がある - 費用対効果:育成プログラムの費用対効果は常に意識し、効率的な育成方法になっているか定期的に点検する必要がある
- 外部環境の変化への対応:育成中も技術の進歩やビジネス環境の変化が起こり得る
よって、状況と育成プログラムの内容に食い違いがないか、定期的な見直しが必要
まとめ
第2章はここまでです。第2章ではDX人材の育成方法について確認してきました。
DX人材の育成方法にはOJTやOFF-JT、外部研修など、様々な育成方法がありますが、自社の状況や目標に合わせて最適な方法を選択したいところです。
また育成と並行して、自社への定着化やDX人材のキャリアパス設計などについても検討していく必要があります。
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- 自社の業種に合ったDX支援策を知りたい
- 具体的なDX導入事例を知りたい
- 推進しているDXの内容を精査して今後の方向性を示してほしい
第3章:DX人材の採用と定着
DX人材の採用はどうする?
第3章はDX人材の採用と定着について解説していきます。
DX人材の採用については、単にITスキルだけでなく、ビジネス感覚や環境の変化への適応力など、多岐にわたる能力を評価する必要があります。以下にポイントをまとめましたので確認していきましょう。
採用戦略
採用戦略としては、以下の3点がポイントになります。
- 求める人物像の明確化:自社のDX戦略に合致するスキルセットと人物像を明確にする
- 多様なチャネルの活用:DX人材の確保はハードルが高いところがあるため(優秀な人材は争奪戦になっている)、ハローワーク、転職サイト、SNS、紹介など、様々なチャネルを検討材料としてあげ、費用対効果の見込める複数のチャネルを戦略的に活用する
- ダイバーシティの重視:多様なバックグラウンドを持つ人材を採用することで、イノベーションを促進することができるため、ダイバーシティについても重視する
面接での評価ポイントはどうする?
次にDX人材の採用基準について、面接での評価ポイントを確認していきます。
- ビジネス感覚:自社のビジネスモデルや課題に対する理解度は十分か
- 問題解決能力:複雑な問題に対して、論理的に思考し、解決策を提案できるか
- コミュニケーション能力:異なる立場の人々と円滑にコミュニケーションが取れるか
- 学習意欲:新しい技術や知識を積極的に学ぶ姿勢があるか
- 変化への適応力:ビジネス環境の変化に柔軟に対応が望めるか
評価方法
DX人材を面接する際の評価ポイントは、いま述べたとおりです。ではどのようにして評価すればよいでしょうか?以下にその評価方法を示します。ただし、あくまで一例ですので、もっとよいアイデアがあればどんどん試してください。
ケーススタディ
実務に近いシチュエーションを想定した課題解決能力を評価する。
グループディスカッション
コミュニケーション能力や協調性を評価する。
プログラミングテスト
ITスキルを評価する。
ポテンシャル評価
将来的に成長できる可能性を評価する。
DX人材の定着はどうする?
次はDX人材の定着について確認してきます。採用できたDX人材は喉から手がでるほど欲しかった人物かもしれません。自社に来てくれたDX人材が長く活躍できるよう、定着のための施策も怠らずに手を打ちましょう。
定着のための施策についても各種各様の工夫があると思いますが、ここでは比較的すぐに取り組める内容を3つ挙げておきます。
定着のための施策
- キャリアパス設計:将来のキャリアパスを明確にし、モチベーションを維持する
- 働きやすい環境づくり①:ワークライフバランスを重視し、働きやすい環境を整える
- 働きやすい環境づくり②:DXを確実に推進できるよう、きちんとした権限を与える
- コミュニティ形成:社内のDX人材同士が交流できる場を設ける
多様性のある組織作り
即戦力となるようなDX人材は、これまでに様々な経験を積んできていますので、多様なバックグラウンドを持つ人材であるパターンが多いです。そのような多様な人材に多いに活躍してもらえるよう、以下のような取り組みについても提案しておきます。
- ダイバーシティ&インクルージョン:多様性を尊重し、誰もが働きやすい環境を心掛ける
- 柔軟な働き方:リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方の導入を検討する
まとめ
DX人材の採用と定着は、企業のDX成功の鍵を握る重要な要素です。多様なチャネルの活用、適切な評価、働きやすい環境の整備。やること、考えることが多いかもしれませんが、優秀なDX人材を採用し、自社に定着させるため、確実に投資するポイントとして押さえておきましょう。
ご質問・ご要望
このブログは中小企業の経営者様向けに、DX人材育成について分かりやすく解説することを目指しています。より詳細な情報や、貴社の状況に合わせた具体的な提案が必要な場合は、お気軽にご相談ください。例えば、以下のようなお問い合わせを多く頂戴しております。
- DX人材の育成方法を知りたい
- 自社の業種に合ったDX支援策を知りたい
- 具体的なDX導入事例を知りたい
- 推進しているDXの内容を精査して今後の方向性を示してほしい
第4章:DX人材育成の成功事例と失敗事例 ~教訓から学ぶDX人材育成~
DXには多くの企業が取り組んではいるものの、DXの本質から見ると、そのほとんどが迷走状態にあると言われています。
ここまでは主に自社でのDX人材育成について順に確認してきましたが、さいごに、他社でのDX人材育成の成功事例と失敗事例からDX人材育成の成功に不可欠な要素と、失敗から得られる教訓を考えてみたいと思います。
では成功事例から確認していきましょう。
成功事例から学ぶ
ケーススタディ1:製造業におけるDX人材育成
事例
- ある地方銀行では、FinTechの導入による新たなサービスの創出を目指し、ビジネスパーソン向けのDX研修を実施した。
成功の要因
- OJTとOFF-JTの連携: 実務経験と座学を組み合わせ、実践的なスキルを習得できるようにした点。
- 社内外の専門家による指導: 社内のベテランエンジニアだけでなく、外部の専門家も招き、多角的な視点から指導を受けられるようにした点。
- 目標設定と進捗管理: 個人に合わせた目標を設定し、定期的に進捗を評価した点。
- 成果の可視化: 具体的な数値目標を設定し、成果を可視化することで、モチベーションが維持できるようにした点。
続いて失敗事例について確認していきましょう。
失敗事例から学ぶ
ケーススタディ1:ITスキルに偏った育成
事例
- あるIT企業では、プログラミングスキル向上に重点を置きすぎてしまい、ビジネススキルやコミュニケーション能力の育成を怠ってしまった
失敗の原因
- ビジネスとの連携不足:ITスキルはあくまで手段であり、ビジネス課題解決のためにどのように活用するかが理解できていなかった点
- 多様性に対する配慮の欠如:異なるバックグラウンドを持つDX人材の背景を考慮できておらずに、コミュニケーションの場の提供が疎かになった点
ケーススタディ2:トップダウン型の育成
事例
- ある企業では、トップダウンでDX人材育成計画を策定したが、現場の意見が反映されず、モチベーションが低下した
失敗の原因
- 現場との連携不足:現場のニーズや課題を把握せずに、画一的な育成プログラムを実施してしまった点
- 自律的な学習の促進不足:自ら学び、成長しようとする意欲を引き出す仕組みを重要視していなかった点
DX人材育成の成功に不可欠な要素とは?
他社でのDX人材育成の成功事例、失敗事例をはじめ、ここまで確認してきた内容を総括し、DX人材育成を成功させるために不可欠な要素として5つに集約しました。どうぞご覧ください。
- トップのコミットメント:トップがDXを重視し、人材育成に積極的に投資する姿勢が重要
- 組織全体の巻き込み:全員がDXの重要性を理解し、目標達成に向けて協力すること
- 多様な学習機会の提供:OJT、OFF-JT、eラーニングなど、様々な学習機会を提供すること
- 評価制度の改革:DXに貢献した社員と社内の評価制度を連動させること
- 失敗を恐れずに挑戦できる環境:失敗から学び、成長できる環境を意図的に作りだすこと
まとめ
DX人材育成は、企業の将来を左右する重要な取り組みです。
成功事例からの学びは、ビジネス視点を持った人材育成、多様な学習機会の提供、組織全体の巻き込みなどがありました。一方、失敗事例から得られる教訓には、ITスキルに偏った育成や、トップダウン型の育成の危険性がありました。
DX人材育成は、一朝一夕にできるものではありませんが、有益な情報を積極的に収集し、自社に合った最適な方法を模索しながら、ぜひともDX人材育成を成功させ、継続的なDX推進を可能にしていただきたいと思っています。
さいごまでご確認いただき、ありがとうございました。
ご質問・ご要望
このブログは中小企業の経営者様向けに、DX人材育成について分かりやすく解説することを目指しています。より詳細な情報や、貴社の状況に合わせた具体的な提案が必要な場合は、お気軽にご相談ください。例えば、以下のようなお問い合わせを多く頂戴しております。
- DX人材の育成方法を知りたい
- 自社の業種に合ったDX支援策を知りたい
- 具体的なDX導入事例を知りたい
- 推進しているDXの内容を精査して今後の方向性を示してほしい