ソフトウェアテストの全ノウハウ│IT初心者のための基本ガイド

はじめに

あなたは「ソフトウェアテスト」に対してどのようなイメージをお持ちだろうか。「難しい」といったイメージだろうか?それとも「よくわからない」といったイメージだろうか?

ソフトウェアには、“目に見えない” “触れることができない” “自由度が高い(法律がない)” といった特徴があり、それだけでも「難しい」「わかりにくい」と思わせてしまう原因を作っているのだが、多人数で開発するときには、そこに “個人への依存度が高い” といった要素も出てくるため、個人差まで考慮しなければならなくなる。そのようなソフトウェアを相手に、“どのようテストをすればよいのだろうか?” また、“どのようテストをすればよいのだろうか?”

さて、現実に目を移すと、私たちの生活は好き好まずソフトウェアに依存している。スマートフォンのアプリからオンライン銀行、さらには医療機器の制御システムに至るまで、ソフトウェアがあらゆる場面で使われているのは皆さんもご承知のことだろう。このような状況であるため、もしもソフトウェアが正しく機能しなかった場合には、企業はユーザーに深刻な影響を及ぼしてしまいかねない。たとえば、オンライン銀行で不具合が発生した場合、ユーザーはお金の振込や引き出しができなくなるとともに、振込先の企業や、ひいては世の中全体に大きな影響を与えることとなり、その企業の信頼は、そのまま一直線に失墜してしまうといったリスクに迫られる。

このような背景からわかるとおり、ソフトウェアテストはシステム開発における品質管理の重要な要素となる。ソフトウェアが意図した通りに動作し、不具合や脆弱性がないことを確認するテストプロセスは、ユーザー体験を向上させるのみならず、企業のブランド価値を守るためにも正しく実施すべきこととして、肝に銘じておきたい。

本記事では、ソフトウェアテストの基本概念から様々なテスト技法、ドキュメント、プロセス、タイプ、ツール、定量的品質管理、はたまた新しい手法や原則に至るまで、初心者でも理解できるようなるべく平易な言葉を用いて解説する。さらに、具体的な事例や手順も交えて、より実践的な知識が得られる内容になることも目指す。長い記事になってしまったが、ブックマークをするなどして最後まで目を通していただければ幸いである。

ソフトウェアテストの基本概念

  • ソフトウェアテストとは

ソフトウェアテストは、開発されたソフトウェアが顧客の要求、あるいは仕様に基づいて、正しく実装されているかどうかを確認するプロセスである。このプロセスは、製品をリリースするまでになるべく早期に不具合を発見、修正し、リリース可否の判断材料を得ることを主な目的としている。以下は、ソフトウェアテストの実行プロセスの概念を図式化したものである。

▲図1:ソフトウェアテスト実行プロセスの概念図

  • ソフトウェアテストの全体像

ソフトウェア開発におけるテスト体系を図式化すると以下のようになる。これらの関係性は是非覚えておこう。

さらに、ソフトウェア開発全体とソフトウェアテストとの関係についても図式化したので、テストの全体感も掴んでおこう。

▲図2:ソフトウェアテストの全体図

  • ソフトウェアテストの目的

ソフトウェアテストの目的は、次の3点に集約できる。何事も目的を抑えることがもっとも重要なことであることから、ソフトウェアテストにおいても、まずは目的からしっかりと押さえよう。

①不具合を早期に検出する

②法規制や契約上の要件への適合性を確認する

③リリース可否を決定するための判断材料を得る

  • 動的テストと静的テストの比較

テスト体系図の中に動的テストと静的テストが出てきたが、これらは以下のように比較して覚えておくとよい。

動的テスト静的テスト
定義・プログラムコードを実行して、その結果からソフトウェアのバグ検出や品質評価、動作確認を行うテスト方法のこと・プログラムコードを実行せずに、ドキュメントやソースコードなどのチェックによって誤りや脆弱性を検出するテスト手法のこと
代表例一般のテスト(動作させないと確認できないテスト)レビュー、静的解析
メリット・実際に動作させて、製品仕様を満たしているか確認できる。
・実際に動作させることで、パフォーマンスやユーザビリティの観点からテストを行うことができる。(仕様の妥当性確認)
・動的に(実行中に)状態や論理が変化することによって引き起こされる問題を見つけることができる(タイミング依存の問題など)
・ソフトウェアの内部構造に関する欠陥(規格からの逸脱や要件の欠陥など)の検出に有効。
・ソフトウェアを動作させる必要がないので、開発プロセスの早期に実施し、欠陥を検出・修正できる。
・静的解析ツールを使い、機械的にコードのチェックができる。
 
デメリット・動的テスト行うためには、モジュールを作成したり、ソフトウェアを動作できる状態にする必要がある。
・不具合の検出は、テスターのテクニック等によって差が出やすい。
・パフォーマンスや仕様の欠陥の検出など、ソフトウェアを実際に動作させないと検出しにくい問題に関しては、静的テストでは不向き。
・ツールによる静的解析は、機械的にチェックをするため、指摘事項が膨大になりやすい。

テストレベル

では、ここからソフトウェアテストの各論の説明に入っていく。まず初めに、「テストレベル」から解説する。

テストレベルとは、ソフトウェアテストを実行する各段階(フェーズ)を示したものである。テストレベルには、それぞれ異なる目的とアプローチがあり、ソフトウェアの品質を確保するためにはそれぞれのテストレベルのテストを段階的に実施することが重要となる。

一般的に、4つのテストレベルがあるので順に見ていこう。

  • 単体テスト(UT=Unit Testing)
項目説明
レベル定義ソフトウェアの最小単位であるモジュールや関数をテストするレベル
目的各モジュールが正しく動作しているかを確認するために行う
実施者テスター(実際にはプログラマーが実施することが多い)
  • 結合テスト(IT=Integration Testing)
項目説明
レベル定義複数のモジュールを統合し、連携して正しく動作するかを確認するテストレベル
目的モジュール間のインターフェースやデータの流れが正常であるかを確認するために行う
実施者テスター
  • システムテスト(ST=System Testing)
項目説明
レベル定義システム全体が要件で決めた通りに振る舞うかを確認するテストレベル
目的すべての機能を統合した振る舞いが、要件で定義した内容を満たしていることを確認するために行う(ユーザー視点で確認する)
実施者テスター
  • 受け入れテスト(UAT=User Acceptance Testing)
項目説明
レベル定義顧客やエンドユーザーがソフトウェアを受け入れるかどうかの判断を行うテストレベル
目的顧客に検収をあげてもらうため、最終的な製品が顧客の要求を満たしているか、また実際の運用に耐えられるかを確認するために行う(顧客との間で合意された基準に基づいて評価する)
実施者顧客(顧客の代わりにテスターが代行する場合もある)

ちなみに、結合テストは厳密には内部結合テストと外部結合テストに区分できるので、ここで触れておきたい。以下、そのイメージを図解で示す。

▲図3:内部結合テストと外部結合テストのイメージ図

このセクションの最後に、テストレベルの振り返りとして4つのテストレベルを一覧にしておく。

テストレベル説明テスト実施者
単体テスト個々の機能やモジュールをテストする。開発側
結合テスト複数のモジュールを組み合わせてテストを行う。
システムテストシステム全体をテストし、全機能が正しく動作するか、ユーザーの要求通りにシステムが振る舞うかを確認する。
受け入れテストユーザーが要求した機能が実装されているかを確認する。実際のユーザーやクライアントが参加することが一般的。ユーザー側

テストドキュメント

品質は一般的に、プロダクト品質とプロセス品質の両方の結果が揃ってはじめて、より正確な品質判断が可能になると言われている。これはソフトウェアテストでも同様で、テストドキュメント(プロダクト)はソフトウェアテストの良し悪しの一翼を担っている。よって、ソフトウェアテストをよりよくしていくためには、テストドキュメントの品質を向上させる必要があるのだが、そのポイントは「標準化」で、今から紹介する「IEEE829」という規格がそれに該当する。

  • IEEE829とは

IEEE829は、ソフトウェアテストにおけるドキュメント標準を定めた規格である。この規格は、テストプロセスの各ステップにおいて作成される文書の種類や内容を明確にし、テスト活動の計画、実行、結果の記録を効率化することを目的としている。

IEEE829をベースに作成したテストドキュメントは、テストのフレームワークとしてテストの透明性と一貫性が確保できるため、プロジェクト内や異なるプロジェクト間での情報共有が容易になる。また、将来的なメンテナンスや監査を容易にすることも可能になる。

Colum:IEEEとは

IEEE(アイ・トリプル・イー:Institute of Electrical and Electronics Engineers)は、アメリカ合衆国に本部を置く電気・情報工学分野の学術研究団体(学会)、技術標準化機関であり、日本語では米国電気電子技術者協会となる。会員の分布、活動は全世界的規模に及び、この種の専門職団体として世界最大規模である。

引用:Wikipediaからの抜粋(一部編集)https://ja.wikipedia.org/wiki/IEEE

  • テストドキュメントの概要

では、まずテストドキュメントのイメージを掴かむところから始める。
IEEE829には、ソフトウェアテストの標準化されたテストドキュメントについて記載されており、そのドキュメント群から抜粋したドキュメント(成果物)を、テストプロセスに沿って並べたものが下図である。

▲図4:テストドキュメント(成果物)の流れ

  • テストドキュメントの種類

以下に、IEEE829の中で定義されている実際のドキュメント名を示すので、まずはそこから確認してほしい。英語なのでイメージしにくいだろうか?それぞれの右手に、本記事の中で紹介するドキュメントを並べておいたので、記事全体を通して理解を進めていってもらえればと思う。

ちなみにIEEE829は、ソフトウェア開発における各テスト工程で作成が必要とされるドキュメントの信頼できる指針の一つとして、世界中の開発現場で利用、参照されていることを付け加えておく。

IEEE829本記事で紹介しているドキュメント
マスターテスト計画(Master Test Plan)全体テスト計画書
レベルテスト計画(Level Test Plan)各レベルのテスト計画書(例:結合テスト計画書)
レベルテスト設計(Level Test Design) 各レベルのテスト設計書(例:結合テスト設計書)
レベルテストケース(Level Test Case)各レベルのテスト仕様書(例:結合テスト仕様書)
レベルテスト手順(Level Test Procedure)
レベルテストログ(Level Test Log) テストエビデンス
異常報告(Anomaly Report) レベルテスト中間状況報告(Level Interim Test Status Report) 不具合管理表 テスト実施報告書
レベルテスト報告(Level Test Report) テストサマリレポート
マスターテスト報告(Master Test Report)
  • テストドキュメントの体系

テストドキュメント全体の関連性については、以下のような体系となる。なお、単体テストでもテスト設計をする場合はあるが、一般的に行わないことの方が多いため、ここでは省略しているのであしからず。

▲図5:ソフトウェアテストのドキュメント体系

ではさいごに、テストドキュメントのポイントとなるテスト計画の概要を見て、このセクションを締めくくる。

  • テスト計画の概要

テスト計画とは、ソフトウェアの品質目標を効率的に達成するために作成するもので、以下のようなテストの指針や概要をまとめたものである。

・テストの目的

・テスト対象の範囲

・実施方法

・テストの体制

・テストの環境

・テストのスケジュール ・テストの完了基準、など

なお、テスト計画書にはプロジェクトに対する全体テスト計画書と、各テストレベルに対する個別テスト計画書がある。「図5:ソフトウェアテストのドキュメント体系」に示してあるので、再度確認しておいてほしい。

テストプロセス

テストドキュメント(プロダクト)とともに、ソフトウェアテストの良し悪しのもう一翼を担うのがテストプロセスである。ソフトウェアテストの品質(良し悪し)はこの両輪がバランスよく回ってこそ良くなるわけだが、「よいプロダクト(成果物)はよいプロセスがあってこそ成り立つ」ことから、まずはテストプロセスの確立から取り組んだ方が効率がよい。

このテストプロセスについては、「JSTQB」というソフトウェアテスト資格のシラバスに「テスト活動とタスク」という見出しで触れられている。よかったらそちらも確認してみてほしい。

参考:テスト技術者資格制度 JSTQB Foundation Level シラバス Version 2023V4.0.J02 P.19
https://jstqb.jp/dl/JSTQB-SyllabusFoundation_VersionV40.J02.pdf

テストプロセスもテストドキュメントと同様でポイントは「標準化」となるが、テストは体系立てて順序よく進めていくことが鉄則というふうに覚えておいてほしい。以下にテストプロセスを示したので、順に見ていこう。

ステップテストプロセス説明成果物
1テスト計画テストの目的やテスト対象となる範囲を明確にし、テストの方針や体制、スケジュールなどを策定する。あわせてテストの判定基準やテスト作業の終了基準もこの段階で策定する。テスト計画書
2テスト分析テストベース(テストのインプットとなる成果物)を整理し、テストすべき条件や要件、さらにはそれを実現するテストケースの作成方針(どのテストタイプ、テスト技法を使うかなど)を決定する。テスト設計書
3テスト設計テスト分析で洗い出した条件や要件を満たすような具体的なテストケースを検討する。このときテスト技法を用いて、抜けもれや重複のないようにするとともに、異常系や境界値等も考慮する。
4テスト実装テスト設計で検討したテストケースを元に、実際にテスト実行するための具体的な手順等を付け加える。また手順と合わせて、想定した振る舞いを確認するためのテストデータや、実行を自動化する場合はテストスクリプトも、この段階で作成する。テスト仕様書 テストデータ テストスクリプト(自動化する場合)
5テスト実行テスト実装で作成した手順に従ってシステムを操作し、期待結果どおりになるかを確認する。期待通りでない場合は、不具合管理表に記載する。(必要に応じてキャプチャなどのテストエビデンスを残す) また、テストの進捗状況も把握しながらテストを消化していく。 テスト実施報告書 不具合管理表
6テスト評価実行したテスト結果は都度評価し、不具合を発見した際は都度その状況を確認する。その後、それぞれの重大度や影響度に応じて分類し、修正の有無や優先順位を決定する。
7不具合修正決定した優先順位に従って不具合を修正していく。修正後のコード
8修正確認テスト修正箇所と、修正により影響のあった箇所を対象に再テストを行う。影響のあった箇所については、正常に動作することがテスト観点となる。もし、影響範囲が特定できない場合は回帰テストを実施する場合もある。テスト実施報告書 不具合管理表 (再テスト分を追記)
9終了判定修正確認テストの結果を分析し、作業を終了して次に進んでよいかどうかを判定する。テストサマリレポート
10終了作業作業の最終確認や今後の活動へのフィードバックを実施する。計画通りに成果物が作成されているか、未対応の不具合はないか、あるとしたら今後の対応方針は決まっているか、などを確認する。テスト計画書(修正版)

これらのテストプロセスはどれも欠かせないが、もっとも重要なプロセスは、やはり効率的なテストを行うためのテスト計画の立案である。なぜなら、「テスト計画を立てること」は「テスト戦略を立案すること」とイコールであるため、テスト計画が不十分であったり、計画自体がなかったりすると、次に示すような、なかなか判断し難い(コントロール不能な)事態に対応しきれなくなるからである。

・いつまでたっても簡単に不具合が見つかり、テストの終了時期が見えない

・予定していたとおりにテストが消化できていないが、期間は延長した方がよいか?

・テスト終了間際で大きな不具合が見つかったが、これを修正するだけでテストを終了してしまってよいか?

・システムテストの段階で、本来単体テストで見つけるべき不具合が見つかったが、もう一度単体テストからやり直した方がよいか?それともこのまま先に進めてしまってよいか?

結論として、逆説的な言い方で恐縮だが、このような事態の対応方法までが書かれているテスト計画書が、本来求められているテスト計画ということになる。

ではさいごに、テストプロセスのポイントを示してこのセクションを締めくくる。

  • テスト分析・設計をしないことによるデメリット

テスト分析とテスト設計を行う理由は、テストの目的や確認ポイントをより明らかにしたいからである。テスト分析・設計を行わなかった場合、以下のような不都合が出てくるので注意しよう。

・誰がどのような意図で作成したのかがわからない

・どの仕様書(または設計書)に対するテストを作ったのかがわからなくなる

・もし仕様変更があった場合、どのテストに影響するのかが調査できない

結論、テストケースを作成するまでに至った意図や過程がわからないと、後々問題になる可能性がある。覚えておこう。

Monologue:品質判断の難しさ

ソフトウェアにおいて、品質の十分性の判断は難しいこととされている。なぜなら、ソフトウェアの特徴により、どれだけテストをしてもこれで十分な品質が確保できたとは言い難いから。

実際にテストで不具合を減らすことは可能だが、不具合をゼロにすることは不可能に近い。また、何がどうなったら顧客満足を得ることができるのか、ということを明確にするのも難易度が高い。 つまるところ、品質とは、ユーザーになりきってユースケースを考え抜くことかもしれない。つまり、「ユーザーはどのような使い方をするのか?」「どのようなシステムを求めているのか?」といったことを、顧客の立場でどれだけリアルに想定できるか?または、どれだけ想像できるか?そういったことが、ソフトウェア開発においてもっとも重要なことなのかもしれない。

テストとV&V(検証と妥当性確認)の関係

ソフトウェアテストとはつまり、「ソフトウェア品質を確認すること」である。そして、そのソフトウェア品質を確認するための観点に、「検証(Verification)」と「妥当性確認(Validation)」の2つのプロセスが存在する。この2つのプロセスは、それぞれが補完し合いながら品質が確保される仕組みとなっており、この2つのプロセスを併せて「V&V」と呼ぶ。このV&Vの概念もソフトウェアテストにとって非常に重要なことであるため、しっかりと押さえておきたい。

まず、V&VのそれぞれのVの説明から行う。

V&V説明
検証(Verification)ソフトウェアがインプット(設計書)どおりに正しく実装されているか、つまり“正しく製品を作っているか”といった開発者の視点から機能を確認することである。
妥当性確認(Validation)ソフトウェアがユーザーの要求を満たしているか、つまり“正しい製品を作っているか”を確認することで、ユーザー視点からユーザーが期待している機能や性能が本当にユーザーの期待通りになっているかを確認することである。

この説明で理解できただろうか。では、以下のような不具合が検出された場合は、V&Vのどちらで確認すべきだったか?少し考えてみてほしい。

1.入力データが反映されない不具合

2.計算結果が間違っている不具合

3.画面UIがわかりづらいといった不具合

4.画面遷移の待ち時間が長いといった不具合

どうだろう?簡単すぎただろうか?では、答えを見ていこう。

1と2の不具合は、どちらも機能が実現できていないことから、検証(Verification)で確認すべき不具合である。

1.入力データが反映されない不具合
2.計算結果が間違っている不具合
→ 検証で発見すべき不具合

一方、3と4の不具合は、要求が満たせていない内容であることから、妥当性確認(Validation)で確認すべき不具合ということになる。

3.画面UIがわかりづらいといった不具合
4.画面遷移の待ち時間が長いといった不具合
→ 妥当性確認で発見すべき不具合

これらの不具合はどちらもあってはいけないのだが、テストの順番としては、機能をテストして検証レベルの不具合を潰してから、システム全体の振る舞いについての妥当性を確認するといった順番になることを覚えておこう。もしこの順番通りにテストを進めなかった場合、いつまでたっても不具合が収まらなくなるといったことになりかねないので、十分に注意してほしい。

▲図6:V字モデルとV&Vの関係

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テストファースト

唐突だが、あなたはW字モデルのことをご存じだろうか?簡単に説明すると、V字モデルの進化形で、開発とテストを同時並行的に進める形を概念化したもので、「開発フェーズもテスト視点を持って進めよう」といったことを強調したモデルである。(いわゆるテストファーストと考え方は同じ)

要するに、W字モデルでは、開発中は終始テストをしているような恰好になるため、このモデルを採用すると、もちろん高品質な製品が出来上がる確率が高くなる。

しかしながら、W字モデルも万能というわけではなく、プロジェクトの特性によっては向き不向きがある。以下にその事例を挙げておく。

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テストタイプ

テストタイプは、特定の目的や方法に基づいて分類されるテストの種類のことを指す。平たく言えば、「テストの狙いで区分した各テストの集合体」ということである。

テストタイプは更に、異なるテストタイプを組み合わせることでより効果的なテストができるようになるため、どのようなテストが有効か?といったテストの狙いをよく考慮して選択するようにしたい。

では、次に代表的なテストタイプを選んで説明する。

  • 機能テスト
テストレベル結合テスト
目的ソフトウェアが要求された機能を正しく実行できるかを確認するため
入力データに対して期待結果通りに出力されるかを確認するテスト
  • 画面テスト
テストレベル結合テスト
目的対象に画面がある場合(Webサービスやスマホアプリなど)が設計通りに正しく動作(表示)するかを確認するため
画面の各要素(ボタン、テキスト、画像など)が設計通りになっているかを確認するテスト
  • 回帰テスト(リグレッションテスト)
テストレベル結合テスト、システムテスト
目的コードの変更が既存の機能に影響を与えていないかを確認するため
新機能の実装後に、前回テストした機能が正常に動作するかを確認するテスト
  • シナリオテスト
テストレベルシステムテスト、受け入れテスト
目的ステークホルダー別で想定される一般的な使い方やイレギュラーな使い方が問題なくできるかを確認するため
業務フローの通りに問題なく操作ができることを確認するテスト
  • ユーザビリティテスト
テストレベルシステムテスト
目的ユーザー視点で、使いづらい、見づらい、分かりづらいところがないか確認するため
新しく設計した画面のUIがユーザーにとってわかりやすいかを確認するテスト
  • 負荷テスト
テストレベルシステムテスト
目的システムがどの程度の負荷に耐えられるか確認をするため
システムが同時に100人のユーザーからのアクセスに耐えられるかを確認するテスト
  • パフォーマンステスト
テストレベルシステムテスト
目的システムのパフォーマンスを測定し、要求を満たしているかを評価するため
Webアプリケーションが特定の負荷条件下でどれだけの速度で動作するかを確認するテスト
  • 探索的テスト
テストレベルシステムテスト
目的テストケースを全て消化したあとに、テストケース以外で不具合がないかを確認するため(経験ベース)
テーマを決めてテスターの経験値ベースで、不具合が潜在していそうな箇所に対して行うテスト
  • マニュアルテスト
テストレベル受け入れテスト
目的マニュアルに記載の操作手順に誤りがないことを確認するため
作成したマニュアルの記載内容に沿って、間違いなく操作できるか確認するテスト

Colum:モデルベーステストについて

モデルベーステストとは、システムの各機能をモデル化して、そこからテストケースを抽出して行うテストのことで、通常のソフトウェアテストはすべてモデルベーステストに該当する。 ちなみに、アドホックテストや探索的テストはテストケースを作成せずに行うテストであるため、モデルベーステストではないテストとなる。

テスト技法

テスト技法とは、テスト分析やテスト設計を行う際に効率のよいテストを実施するための手法やテクニックのことである。ソフトウェアテストは一般的に、すべての条件の組み合わせをテストしようとすると、その数が膨大になりすぎて現実的ではなくなる。そのため、効率的かつ効果的なテストを実施するためにテスト技法を用いる。

では、テスト技法について解説していく。

  • テスト技法の分類

テスト技法は、大きくブラックボックステストとホワイトボックステストに分類される。(その間に位置するグレーボックステストも存在はする)以下、それぞれの概要を説明する。

ブラックボックステスト

ブラックボックステストは、内部構造を考慮せず、外部からの入力と出力の関係のみを確認するテスト技法である。このアプローチは、ユーザーの観点から機能が正しく動作するか、ユーザーの要求や期待を満たしているかを評価する。代表的なブラックボックステストには、同値分割や境界値分析が挙げられる。

ホワイトボックステスト

ホワイトボックステストは、内部のロジックや構造に基づいてテストを行う技法で、テストケースはコードの実装に基づいて設計する。このアプローチは、コードの内部動作が正しいこと、特に条件分岐やループの網羅性などをチェックする。ホワイトボックステストは単体テストで使われることが多いテスト技法で、命令網羅(C0)、分岐網羅(C1)、条件網羅(C2)などがある。

グレーボックステスト

グレーボックステストは、ブラックボックステストとホワイトボックステストの中間のアプローチで、システムの内部構造と外部からの観点を組み合わせたテスト技法である。つまり、内部構造についての知識を持ちながら、ブラックボックステストのように外部からの視点で行うテストがグレーボックステストである。 この技法は、システムの内部構造をある程度理解していなければ、テストを進めることが難しいといった点がポイントになる。

▲図7:ブラックボックステスト、ホワイトボックステスト、グレーボックステストのイメージ図

  • ブラックボックステストの代表例

次に、ブラックボックステストの中でよく用いられるテスト技法を説明する。

同値分割

同値分割は、入力項目が連続する値を持つ場合に、入力領域を同値クラス(同様の出力結果が得られる部分集合)に分けて、それぞれの同値クラスに代表値1つをテストする技法である。このテスト技法により、テストケースは3つに圧縮できる。

▲図8:同値分割のイメージ図

境界値分析

境界値分析は、入力項目が連続する値を持つ場合に、入力領域を同値クラスに分けて、それぞれの同値クラスの境界の値をテストする技法である。このテスト技法により、テストケースは4つに圧縮できる。

▲図9:境界値分析のイメージ図

デシジョンテーブル

デシジョンテーブルは、テスト対象の条件と結果の組み合わせをデシジョンテーブルで整理して、その組み合わせに基づいてテストケースを作成するテスト技法である。

▲図10:デシジョンテーブルのイメージ図

以上、ブラックボックステストの代表的な技法を紹介したが、もちろんブラックボックステストには、それ以外のテスト技法もある。以下に、それ以外のテスト技法も含めて一覧にしたので、必要なときに見直してほしい。ソフトウェアテストは、限られた時間の中でいかに有効なテストができるか?ということが求められるため、テスト技法は効果的に活用できるようにしよう。

技法名方法
同値分割連続する値の入力条件をグループにまとめ、それぞれのグループで代表値を1つずつテストケースとして作成する。
境界値分析連続する値の境界を識別し、境界付近の値を計4つテストケースとして作成する。
デシジョンテーブル条件の組み合わせの相互作用をデシジョンテーブルで整理し、それを網羅するテストケースを作成する。
状態遷移テスト状態遷移を状態遷移図や表で整理し、それを網羅するテストケースを作成する。
組み合わせテストパラメータの組み合わせを網羅するテストケースを作成する。この技法には直行表とオールペア法がある。
ユースケーステスト仕様をユースケースで整理して、それを網羅するテストケースを作成する。
探索的テストテストの実行結果を見て経験値から不具合が潜んでいそうなところを重点的にテストする。(テストケースは作成しない場合が多い)

Columテスト技法の選択方法

テスト技法は決して闇雲に使うのではなく、テスト計画を立案する際、テスト対象の特性や仕様、テストの目的やスケジュール、利用可能なツール等までを考慮して、適切なテスト技法を選択することが重要となる。 また、どのような狙いでテストをするのか?(状態遷移の確認するのか?入力条件の組み合わせを確認するのか?など)によって、それぞれのテストの狙いに応じたテスト技法を選択する必要があることも付け加えておく。

テスト仕様書(テストケース)の作成(ポイントのみ)

テスト仕様書(テストケース)は、設計したテストケースをテスト実施者が間違いなく実行できるよう、手順や期待結果などをまとめたものである。組織によっては、「テストケース」や「チェックリスト」など様々な呼び名が付いているようだが、全て同じものである。ここでは、テスト仕様書作成時に押さえておきたいポイントをまとめておく。

ポイント注意点
期待結果1つのテストケースに対して期待結果は1つにすること
入力値入力値は指定した方がよい(指定しなかった場合、何を入力してテストしたかわからないため、正確なテストが実施されたかが判断できない)
手順手順はなるべく省かないようにする(手順ごとに番号を振るとよい)

▲図11:テスト仕様書(テストケース)のイメージ

ちなみに厳密には、「テストケース」はひとつひとつのケースのこと、「テスト仕様書」は作成したテストケースの集まり(全てのテストケース)のことを指す。これも覚えておこう。

不具合管理

ここからは、テストで検出した不具合の管理について一通りのことを解説する。

  • 不具合の定義

不具合とは、ソフトウェアが「期待通りに動作しない状態」や、「ユーザーの要求とは異なった振る舞いをする状態」のことを指す。

  • 不具合管理のプロセス

不具合は、基本的に以下の流れで管理する。以下、ステップごとに説明する。

ステップ作業説明
不具合の報告不具合を発見したら、不具合管理表に詳細を記載する。記載内容には、再現手順や環境情報を含める。
不具合の優先順位付け不具合管理表に並んだ不具合の深刻さや影響度に応じて優先順位を設定する。また、修正しない不具合がある場合は修正しない理由を明確にする。
不具合の修正作業優先度の高い不具合から修正に取り掛かる。優先度の低い不具合まで、修正すると決めたすべての不具合に対して修正作業を行う。
不具合修正後の再テスト修正が完了したら再度テストを実施し、修正ができていること、また修正により既存の機能に影響していないかを確認する。もし、修正が未完了だった場合は、再度不具合修正作業に戻る。
不具合のクローズ再テストが完了したらその不具合をクローズする。ここまでの流れを修正する全ての不具合に対して実施する。

▲図12:不具合対応フロー(イメージ)

  • 不具合管理表への記載内容

不具合報告(不具合管理表への記載内容)は具体的かつ明確でないと、修正作業を行う開発者に「何をどのように修正すればよいか」が正確に伝わらないことがある。そのようなことが起こらないよう、不具合報告には最低限、以下の情報を含めること。

報告内容説明・備考
不具合の説明説明は5W2Hに沿いつつ簡潔に記載する。(これによって具体的な説明になる)
再現手順不具合が発生するまでに行う操作すべてを手順として記載する。(手順は省略してはいけない)
エビデンスの添付エビデンスとして、スクリーンショットやログファイルを添付する。
(これらの取得には時間がかかるため、テストに使える時間との兼ね合いをみて可能な限り取得するようにしたい)

▲図13:不具合管理表のイメージ

  • 不具合管理ツール

不具合管理は、エクセルなどのテンプレートで管理する場合やツールを利用する場合など、その組織によってさまざまだが、ツールを利用した方が作業を効率化できる要素は多い。無料で使えるもの(例えば“Redmine無料版”など)もあるので、まだ試したことがない方は一度試してみてほしい。

5分でわかるRedmineの概要
https://redmine.jp/gofun/overview

  • 不具合のパターン

ソフトウェア開発とは、顧客の要求から要件を定義して、それをプログラムで実現しようとする一連の活動である。この活動途中で何らかのヒューマンエラーが起きたときに不具合が混入してしまうわけだが、その原因は一つとは限らない。一度じっくりと下図をみながらその原因を考えてみてほしい。きっと新しい発見があると思う。

▲図14:不具合のパターン

No.結果状況不具合の原因
仕様通りに動作する要件定義とプログラムが一致しているなし
仕様と異なった動作をする要件定義通りにプログラムされていない誤り
要件定義がプログラムされていない漏れ
要件定義にないことがプログラムされている冗長
仕様自体が間違えている要件定義のミス要求の抽出漏れ

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テストの定量的品質管理

ソフトウェアには“目に見えない”という特徴がある。そのため、管理するためにはソフトウェアの状況を目に見えるようにする必要がある。ここで登場するのが定量的品質管理である。ソフトウェア品質を取り扱う上で一番重要なことは品質を見える化することであり、中でも数値化がポイントとなる。

数値への置き換えが可能になると、グラフ形式にして上がり下がりの推移がわかり、比較もできる。そして、比較により分析も可能になり、客観的な評価も可能になる。それを体系的にしたものが定量的品質管理である。

定量的品質管理の第一歩目は、適切なメトリクスを定義することから始まる。メトリクスはあまり聞き慣れない用語だと思うので、まずはメトリクスの意味から確認しよう。

メトリクスとは、さまざまな活動を定量化し、その定量化したデータを分かりやすく加工した指標のこと。要するに、何かしらのデータ(数値)を集めて、計算や分析を加えて意味のあるデータ(数値)に変換したものである。

では、次からメトリクスの具体例をみていこう。テストで定量的品質管理を行う上では、以下のメトリクスが代表的で、実際のプロジェクトでも用いられる場合が多い。それぞれがどのような指標なのかを解説する。

メトリクス説明見方
バグ密度ソースコード1,000行あたりの不具合数の割合バグ密度が高い場合は、品質がよくないか、普段より有効なテストができたかの何れかが想定できる
テスト密度テストケース数をテスト対象の機能やソースコードの行数で割った割合テスト密度が高いほどテストが網羅的であることを示すが、テストの有効性はどうであったかを考慮する必要がある

あと、あまり知られていないが、不具合を修正するまでの時間をメトリクスとして収集するのも、テストプロセスを見直したい組織にとっては意味があったりする。

メトリクス説明見方
不具合修正時間不具合を発見してから修正完了までにかかった時間(日数)修正時間が長い場合は、その原因を追究し、プロセスの見直しが必要かどうかを判断する

実際の分析方法には、管理図分析やゾーン分析等があるが、ここではイメージだけをお伝えする。特にIPAの資料にとても詳しく書かれているので、そちらを参考にしてほしい。

▲図15:モデルを用いた分析方法(続 定量的品質予測のススメ P.14から抜粋)

【IPA】定量的品質予測のススメ
https://www.ipa.go.jp/archive/publish/qv6pgp0000000yw8-att/000005133.pdf

【IPA】続 定量的品質予測のススメ
https://www.ipa.go.jp/archive/publish/qv6pgp0000000zi2-att/000005143.pdf

テストチームの構築と管理

ソフトウェアテストは一人でやることよりも、チームを組んで進めるシチュエーションの方が圧倒的に多くなる。そのため、テストチームについても触れておく。

  • タスクと役割分担

テストを進めるうえで発生する主なタスクとその役割分担は、だいたい以下のようになる。

タスク役割分担
全体テスト計画の策定プロジェクトマネージャー
レベルテスト計画の策定テストマネージャー
テストのコントロール、モニタリングテストマネージャー
テスト分析→設計→実施テストチーム
テスト実行テストチーム
不具合起票テストチーム
不具合修正有無の決定及び修正作業開発者
修正確認テスト実行テストチーム
振り返り関係者全員
  • テストチームのスキルセット

上表のとおり、テストチームはテストの実務全般に携わるため、一般的なテストの技術以外にも求められるスキルがある。テストチームの一員になったら、テスト技術以外の以下のスキルも身に付ける必要がある。

スキルセット説明
ドキュメント読解力インプットとなる仕様書や設計書からテストケースを抽出する際に必要となる
テスト技術力手動のテストのみならず、自動化テストの知識と技術も必要となる
コミュニケーション力プロジェクトの他のチームメンバーとの連携が必要で、特に開発者とのコミュニケーションが多くなる
作業の正確性間違ったテストをしても全く意味がないため、テスターには作業スピードとともに作業の正確性が重要視される。
  • テストチームの管理

テストチームを効果的に管理するため、テストマネージャーになったら以下のポイントに留意しよう。

ポイント説明
定期的にミーティングを実施する進捗や課題については、なるべくデイリーでミーティングを行うようにし、何か問題が起きた場合にはすぐに手を打てるようにしておくことが重要。
また、テスターの相談にも対応できるように1on1なども考慮する。
エスカレーションを徹底させる致命的な不具合が発見された場合などは特にマネージャーにすぐに報告があがるように体制を整えておく。なお、不具合の状況によっては、テストの優先順位を変更するなどの判断が必要となる場合があるため、指示が徹底できる仕組みについても考慮すること。
トレーニングの機会を設けるテストの進捗はテスターのスキルに左右されることが多いため、必要に応じてテスターに対するトレーニングの機会を設ける。特に新しい技術や手法を取り入れる際は、トレーニング期間を設けることは必須と心得ておくこと。

 手動テスト vs 自動化テスト

ここからは、テスト関連で知っておいたほうがよいことを解説していく。まずは自動テストから見ていこう。

これまで説明してきたような、テストケースを一つ一つ人の手で行うテストを手動テスト、一方、スクリプトやツールを利用して人の手を介さずに行うテストを自動化テストと呼ぶ。いま世の中的には、「テストが早く大量にこなせる」「コストが安くなる」といった呼び声でテスト自動化の風潮に流れつつあるようだが、本当にその流れに従うことはよいことなのだろうか。以下に、自動化テストと手動テストを項目ごとに並べ、それぞれを比較しながら考察してみたいと思う。

項目手動テスト自動化テスト
テスト準備について自動化テストよりも早くできる(ただし毎回準備する必要がある)スクリプトの用意など、手動テストよりも時間がかかる(ただし今後も同じテストをする場合は次からは準備は不要)
テスト実行について手動で行う自動でできる
テスト実行時の応用について不具合が発見されたとき、本当に不具合なのか、テストケースが間違えているのか、などとテストケース以外のことについて探索的にテストをしているテストケース以外のテストはしない(できない)
テストの進捗(テンポ)についてすべてのテストケースを同じテンポで進めることはできない(テストケースが読み解けなかったり、不具合かどうかを確かめるのに時間がかかったりする)同じスピードでテンポよく進めることができる
テストの実行スピードについてテスト実行スピードは遅い(自動化テストと比べものにならない)テスト実行スピードは速い(反復的なテストに有効)
テストの実行時間帯についてテスト実行はテスターがいる時間のみしかできないテスト実行は一日中可能
テストの正確性についてヒューマンエラーは避けられないエラーは起こらない(決めたとおりに実行する)
ユーザビリティについて使いやすさや見やすさなど、ユーザーになりきって確認でき、テストケース以外の不具合にも気を配ることができる(例えば画面遷移テストで画面のレイアウト崩れに気づくなど)できない(というか向いていない)
また、テストをした時に手動だったら気づくようなテストケース以外の不具合(レイアウト崩れなど)は発見できない(事前に設定されたテストコードに従ったテストしか行わない)
イレギュラーなテストについてできる(テスターの判断により広範に行うことが可能)できない(テストできるのは記述した範囲のみ)
回帰テスト(テストケースが固定)について自動化テストに勝る特徴はない自動化テストが得意とするテスト
テスト結果判断について主観的になることがある期待結果と同じであればOK、異なればNG(それ以外の判断はない)
新たな不具合の発見について人がアナログ的に判断するため、新たな不具合が発見されやすい人が決めたテストしかしないため、新たな不具合が見つかることはない
不具合分析について不具合を発見する毎に再現性も含めて確認しているので、分析時には手間や時間がかからない発見された不具合は、あとから人の手で一つ一つ再現しなければならないため、分析には多くの手間と時間を要する
テストメンテナンスについてざっと見直す程度スクリプトのメンテナンスが必要
毎回新しいテストケースを作成する場合テスト分析、設計をしてからテストケースを作成(今まで通り)テスト準備でコストがかかるため、同じテストケースを繰り返しできないようなテストに有効性はない
ツール選定についてツールは使わない機能とコストのバランスが難しい(一番安価なものをまず使ってみて、使い勝手の悪い部分や、実装されてなくて困った機能等をリストアップして、それら問題が解決できるツールを選択するのがベター)
コストについて①初期投資=不要
➁実行=必要(テスト工数(人件費)がかかる)
③不具合分析=必要(工数(人件費)がかかる
④メンテナンス=ほぼ不要
①初期投資=必要(自動化ツール導入費、スクリプト作成)
➁実行=不要
③不具合分析=必要(工数(人件費)がかかる(※但し不具合があったことしかわからないため、人の手で再現手順の確認などイチから不具合分析を行わなければならない)
④メンテナンス=必要(スクリプトの書き換え作業が発生する)

このように、自動化テストは万能ではなく、手動テスト、自動化テスト、それぞれに利点もあれば欠点もある。自動化テストが効果的な繰り返しできるテストにおいてはとても有効な手段となるが、ツールの導入やスクリプトの準備、メンテナンス等に結構な額のコストがかかることもあり、自動化の導入を進める際は、十分に検討したうえで手を打つようにしたいところだ。

テスト自動化の8原則

「テスト自動化の8原則」についてはご存じだろうか。テスト自動化の8原則は、テスト自動化研究会により導き出された、さまざまなテスト自動化に共通する原則のことで、テスト自動化に取り組む際の注意点が網羅的に書かれている。

テスト自動化については、この8原則も紹介しておきたいと思う。なお、詳細については下記URLから確認してもらえればと思う。

  • テスト自動化の8原則
原則1手動テストはなくならない
原則2手動でおこなって効果のないテストを自動化しても無駄である
原則3自動テストは書いたことしかテストしない
原則4テスト自動化の効用はコスト削減だけではない
原則5自動テストシステムの開発は継続的におこなうものである
原則6自動化検討はプロジェクト初期から
原則7自動テストで新種のバグが見つかることは稀である
原則8テスト結果分析という新たなタスクが生まれる

引用:テスト自動化の8原則https://sites.google.com/site/testautomationresearch/test_automation_principle

アジャイル開発とテスト

さて、ここからはアジャイル開発とテストについて見ていこう。

アジャイル開発と言えば、俊敏さ、柔軟性、頻繁なリリースといったイメージだと思うが、ソフトウェア品質を「品質=顧客満足」と単純化して考えた場合、アジャイル開発ほど高品質な開発手法はないと考えている。なぜなら、アジャイルの特徴である「俊敏さ」「柔軟性」「頻繁なリリース」はすべて顧客が喜ぶ要素だからである。

例えば、頻繁なリリースについては、顧客がその都度動くものに対してOKサインを出していることになる。つまり、アジャイル開発とは、常に顧客を満足させながら開発を進める高品質な開発手法だと言える。

また、アジャイル開発に合わせたテスト方法に、いくつかのベストプラクティスも存在するので、以下に紹介しておく。

テスト方法説明
テスト駆動開発(TDD)先にテストケースを書いてからコードを書くアプローチのこと。この手法により、コードが期待される動作を満たすことが確実になる。
ペアプログラミング2人のプログラマーが1台のコンピュータを使って共同でコードを書くプロセスのこと。2人が協力することで各自の知識やスキルが相互に補完され、新しい技術やライブラリについての理解が深まるといった利点がある。
継続的インテグレーション(CI)コードが変更されるたびに自動的にビルドとテストを行うプロセスのこと。変更の影響を早期に確認できるのが利点となる。

▲図16:テスト駆動開発(TDD)のイメージ図

新しいテスト手法とツールの登場

これからのテクノロジーの進化と共に、ソフトウェアテストもより変化が求められるようになるはずだ。実際にAIを活用したテストも登場しており、今後AIにより、ソフトウェアテストがもっと楽に、もっと効率的になる日はそう遠くないのかもしれない。では、いま注目されているテストをざっと確認しておこう。

注目されているテスト新機能できること
AIを活用したテスト自動テスト生成過去のテスト結果をもとに、新しいテストケースの自動生成が可能になる
異常検知パターン学習により、予期しないバグの早期発見が可能になる
クラウドベースのテスト環境スケーラビリティ必要に応じてリソースが追加できるようになることで、負荷テストや大規模なテストの実施が容易になる
DevOpsとの統合テストの自動化と統合開発プロセスのテストが自動化されていくとともに、コードの変更ごとに即座にテストの環境構築が可能になる(※DevOpsの流れにより、開発と運用の一体化が進む中で、テストもこの流れに組み込まれることが予測される)

ソフトウェアテストの7原則

5章テストプロセスで採り上げたJSTQBには、「テストの原則」についても書かれている。

参考:テスト技術者資格制度 JSTQB Foundation Level シラバス Version 2023V4.0.J02 P.18
https://jstqb.jp/dl/JSTQB-SyllabusFoundation_VersionV40.J02.pdf

実際には7つの原則が示されているが、ソフトウェアテストに携わる者としてはどれもこれも最低限知っておくべきことなので、最後に紹介しておく。それぞれその意味するところをしっかりと吟味しながら読み進めてほしい。

原則1テストは欠陥があることは示せるが、欠陥がないことは示せない
JSTQBによる説明テストにより、テスト対象に欠陥があることは示せるが、欠陥がないことは証明できない。テストにより、テスト対象に残る未検出欠陥の数を減らせるが、欠陥が見つからないとしても、テスト対象の正しさを証明できない。
私見いかに有効なテストができるかがポイントとなる。
ポイント「網羅性が高いこと」、そして「正確なテストを実施すること」の2点がテストの有効さを示す。
原則2全数テストは不可能
JSTQBによる説明すべてをテストすることは、ごく単純なソフトウェア以外では非現実的である。全数テストの代わりに、テスト技法、テストケースの優先順位付け、リスクベースドテストを用いて、テストにかける労力を集中すべきである。
私見テスト戦略とテスト技法はやはり重要である。
ポイントテスト戦略(テスト計画)とテスト技法はソフトウェアテストには欠かせない。
原則3早期テストで時間とコストを節約
JSTQBによる説明プロセスの早い段階で欠陥を取り除くと、その後の作業成果物では取り除かれた欠陥に起因する欠陥を引き起こすことはない。SDLCの後半に発生する故障が少なくなるため、品質コストは削減される。早い段階で欠陥を見つけるために、静的テストと動的テストの両方をなるべく早い時期に開始すべきである。
私見手戻りは悪以外何物でもない。手戻りを少なくするには、テストファーストの考え方(W字モデルの概念)が重要。また、レビューとテストの質の向上に取り組むことも重要。
ポイント1:10:100の法則を理解しておくこと。(図17参照)
原則4欠陥の偏在
JSTQBによる説明通常、見つかる欠陥や運用時の故障の大部分は、少数のシステムコンポーネントに集中する。この現象は、パレートの法則を示している。予測した欠陥の偏在、および実際にテスト中または運用中に観察した欠陥の偏在は、リスクベースドテストの重要なインプットとなる
私見不具合が偏在する理由はある程度想定できる。(例えば、開発者の知識とスキルのレベル、プログラムの難易度、新しい技術の導入など)
ポイント80/20の法則(全体の80%の問題は20%の機能から発生する)を応用して20の方に想定する機能から優先的にテストを行う。
原則5テストの弱化(殺虫剤のパラドックスにご用心)
JSTQBによる説明同じテストを何回も繰り返すと、新たな欠陥の検出に対する効果は薄れてくる。この影響を克服するため、テストとテストデータを変更したり新規にテストを作成したりすることが必要になる場合がある。しかし、例えば、自動化されたリグレッションテストのように、同じテストを繰り返すことが有益な結果を示すことができる場合がある。
私見テストケースは定期的に見直し、更新する必要がある。 既存のテストケースを使い回している組織は要注意。
ポイント見直すべきポイントはテストタイプである。 但し、リグレッションテストの変更は逆効果になる可能性があるので注意。
原則6テストはコンテキスト次第(テストは状況次第)
JSTQBによる説明テストに唯一普遍的に適用できるアプローチは存在しない。テストは、コンテキストによって異なる方法で行われる。
私見テストのアプローチや内容は、プロジェクトの状況や環境によって異なるため、開発スタイルや製品の性質に応じてテスト戦略や方法を柔軟に変更する必要がある。
ポイントテストの状況にはいくつかの捉え方がある。
① 利用するシチュエーション
② システム特性(人命に関わるシステムと社内業務システムでは求められる品質が違う)
原則7「欠陥ゼロ」の落とし穴
JSTQBによる説明ソフトウェアを検証するだけでシステムを正しく構築できると期待することは誤り(つまり、思い込み)である。例えば、指定された要件すべてを徹底的にテストし、検出した欠陥すべてを修正しても、ユーザーのニーズや期待を満たさないシステム、顧客のビジネスゴールの達成に役立たない、およびその他の競合システムに比べて劣るシステムが構築されることがある。検証に加えて、妥当性確認も実施すべきである。
私見V&V(Verification&Validation)はどちらかに偏ってもいけない。ただ、Validation視点が抜け落ちるのは問題外。
ポイントV&Vのプロセスは順序よく進めること。(Verification→Validationの順)

▲図17 1:10:100の法則

引用:「ソフトウェア品質保証の方法論、技法、その変遷」P.31を参考に作図
https://www.jaspic.org/event/2009/SPIJapan/keynote/SJ9keynote.pdf

ソフトウェアテストに関するその他(Q&A形式)

この記事で書ききれなかったことをQ&A形式でまとめたので、よかったらここもチェックしておいてほしい。

質問回答
重大な不具合から見つけることはできますか?不可能。(不具合の重大さはその不具合を発見してはじめてわかる)
テストケースが不足していると感じるとき、どうすれば良いか?テストの目的とテストレベルからテストタイプを見直すとよい。もしテストタイプが抜けていたら追加してテストケースにまで落とし込む。
テストの優先順位を決めるのが難しい場合、どうするか?リスクベースアプローチを用いて、機能の重要度やユーザー影響度に基づいて優先順位を設定する。また顧客と協議するのもよい。
テストの進捗状況を報告する際、どの指標を使うべきか?不具合検出率(成果進捗)とテストケースの消化率(工程進捗)は最低限用意した方がよい。
チーム内でのテストの認識にばらつきがある場合、どうすれば良いか?根本解決するにはテスト基準を明文化するのが一番よい方法であるが、デイリーミーティングを継続的に実施することも有効。(テストプロセスや目的の共通理解を促進するのに役立つ)
テスト結果とテストケースの期待結果に違和感があった場合、どのようにするべきか?まずテストケースの正確性を確認する。(テストケースの設計、環境設定、データの正確性、手順等に間違いがないかを確認)
テストケースに間違いが認められなければ、次に設計書に間違いがないかを確認する。
設計書にも間違いがなければ、顧客と相談する。
スケジュールが圧迫されている中で品質を保つには?機能の重要度やユーザー影響度が高い機能に絞ってテストをする。つまり、テストの優先順位を決めるのと同じ考え方になる。

編集後記

ソフトウェアテストのテストレベル、テストタイプ、テストプロセス、テストドキュメント、テスト技法などを理解することは、効果的なテストを実践するための知識であるとともに、スキルでもあることをお伝えしてきた。また、単体テストから受け入れテストまで、各テストレベルには特有の目的とアプローチがあること、アジャイル開発は高品質な開発手法であること、テスト(自動化テストも含め)には原則があることも、お伝えしてきたとおりである。私にできるのはここまでで、今後この情報をどう活かすかはあなた次第である。

さあ、いますぐ行動しよう!

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